2.90 Alpha の各種デノイザーの比較

投稿日時 2020年07月16日 | カテゴリ: Blender 2.9

 2.90 の BCon3 があと一週間に迫り、さらにRTX 以外の Maxwell NVdia カードでも OptiX が利用可能になったことから、2.90 Alpha に実装されているデノイザーをテストしてみることにしました。

■利用方法


1.プロパティエディターのレンダー(Render)タブ→▼Render Engine を「Cycles」にします。
2.▼サンプリング→▼デノイズ「レンダー」「ビューポート」をそれぞれ設定します。
3.ビューポートのシェーディングを「レンダープレビュー」に設定します。

 初回の実行時はカーネルのローディングのため、若干時間がかかります。
 ビューポートデノイズ時、デフォルトではパストレーシングのサンプリング毎にデノイズしますが、「Start Sample」を増やすと、そのサンプル数以降にのみデノイズを開始します。大きな数値(10000など)を入れておくと、ビューポートのレンダリングが終わった後にデノイズするようになります。

■デノイザーの種類


 利用可能なデノイザーには「NLM」、「OpenImageDenoise」、「OptiX」の3つがあります。

  • NLMは Non Local Means(非局所的平均)の略であり、Blender 2.81から使用されているデノイジングアルゴリズムです。
    CPU の種類に依存しません。

  • Open Image Denoise(以下 OIDNは、Intel で開発されたデノイザーで、Blender 2.83から実装されています。
    SSE4.1 に対応する CPU で利用可能です(対応していれば AMD の CPU でも OK)。

  • Optix」は、NVidia が開発した NVidia の GPU 専用のレイトレーシングエンジンです。Blender ではその機能の一つである、AI アクセラレーテッド・デノイザー機能を使用しています。
    このデノイザーを使用する場合は、先に「編集メニュー→Preferences...→システムタブ→OptiX」で有効化する必要があります。もし利用可能なカード(GTX700以降)なのに有効化できない場合は、ドライバの更新が必要になるかもしれません。
    また、ここに書かれているとおり、執筆時点ではまだ実験的機能であり、Cycles の全部の機能が利用できるわけではないことに注意してください。



  • ■単純な反射・屈折コースティクス画像での比較


     テストは Sandy bridge 世代の CPU に、ミドルエントリの旧世代 GPU と、なかなか貧弱な環境で行います。

    環境: i7-2600+GeForce GTX1060、Windows 10Pro 1909
    Blenderのバージョン:blender-2.90.0-f319eec88186-windows64

     まずは図のような、反射コースティクス(右の金のリング)、屈折コースティクス(左のガラス玉)のあるシーンでの比較です。
     画像サイズは512×320、適応サンプリング使用、サンプル数は576です。

     最初は NLM です。一番高速ですが、他の二つが機械学習を行っている所為なので単純比較はできないでしょう。リングの球の映り込みがノイジーなのが気になります。


     次はOptiX。一番メモリ消費量が大きいです。品質は悪くないと思います。


     最後は OIDN です。メモリ消費量が一番少なく、品質も問題ないでしょう。


     それぞれ屈折コースティクスの形が微妙に違うのが面白いですね。
     OptiX であまりパフォーマンスがでないのは、まだ Blender に実装されてまもないこと、そしてテストで使用している GTX 1060では力不足ということが原因としてあげられます。

     とりあえず、まだ結論を出すのは早いので、もう少しテストしてみます。


    ■コーネルボックスでの比較


     みんな大好き(?)コーネルボックスでの比較です。
     画像サイズはもっと大きく1024×1024、適応サンプリング使用、サンプル数は思い切って16にしてみました。

     NLM は部屋の向こう側の AO がでこぼこになっていますね。


     OptiX は NLM より綺麗ですね。速度も OIDN より少し速いです。



     ODIN も OptiX と影の付き方が若干違いますが、綺麗です。メモリ消費量は相変わらず一番少ないです。



    ■比較的暗い画像での比較


     そして最後はもっと暗い画像で試してみます。
     画像サイズは1024×640、適応サンプリング使用、サンプル数は512。暗めでノイズが多く、非常に厳しい条件です。具体的には下のような感じ。

     これはひどい。
     これをどこまで綺麗にしてくれるでしょうか。


     NLM はさすがにキツいのか、全体的にボコボコになっています。


     次は OptiX。妙な輝点が出ていますね。まだ実装に問題があるのかもしれませんし、暗い場所ではこうなりやすいという話もあります。


     最後は OIDN。元の画像からここまでにしてくれれば御の字だと思います。



    ■まとめ


     現時点では環境を選ばない「NLM」、対応 CPU があれば安定の「OIDN」、弱点はあるものの、対応 GPU があれば可能性は未知数の「OptiX」といった感じでしょうか。
     Bcon4はまだひと月以上先です。より一層のポリッシュが楽しみです。



    Blender.jpにて更に多くのニュース記事をよむことができます
    https://blender.jp

    このニュース記事が掲載されているURL:
    https://blender.jp/modules/news/index.php?page=article&storyid=4218