コミュニティ・話題
コミュニティ・話題 : Project London:Ian Hubert氏インタビュー
元記事:Project London: interview with Ian Hubert - BlenderNation
B@rt氏による記事です。
Jim Thacker氏が‘Project London’のブレインである Ian Hubert のインタビューを行いました。とんでもない作業量についてはもちろんのこと、このプロジェクトの歴史と志についてのいい見識を与えてくれます。
Jim氏曰く、
現代の標準によると、650のビジュアルエフェクトのショットは、一つのハリウッド映画としてはよくあることだそうです。例えば、不発に終わった Vince Vaughanのコメディ、Fred Claus にも650の VFX ショットがあります。ポセイドンアドベンチャーの Wolfgang Petersen による豪華なリメイクもそうです。
しかし、何が Project London を非凡な物にしたかというと、これが1億6千万ドルのハリウッド映画ではないこと ― ほぼ1億6千万ドルの域に達していることです。
メインストリームに勝るとも劣らない、同じボリュームのディジタルエフェクトワークが特徴なのにもかかわらず、このもうすぐ公開の SF スリラーは、インターネットを通じ遠方で働くボランティアたちの小さなチームによってポストプロダクションが行われました。
さらに驚くことに、このエフェクトは Autodesk Maya や SoftImage のような業界標準ツールではなく、オープンソース3Dアニメーションパッケージである Blender で制作されたのです。
ちなみに、私は Ian氏のブログ記事を BlenderNation Community News に追加しました。更新がこのホームページに自動的に表示されます。
リンク
・Project London: The Most Ambitious No-Budget Effects Movie Ever?
以下はこのインタビューの要約(というか一部略しただけ)です。元記事には画像もありますので、そちらもご覧下さい。
Jawbone.tv: あなたはアメリカ出身ですが、どうして Project London というタイトルに?
Ian Hubert氏: 本当ですね! 私たちはワシントン州のシアトル出身なのですが、なぜこう呼ぶようになったのかは謎のままです。
この名前は数年前に思いついたもので、抽象的すぎるため、もっと適切なタイトルにしようとしたこともありました。今のところうまく回避できていますが。
Jawbone.tv: この映画はどういった経緯で制作されたのでしょ?
Ian Hubert氏: 2006年の夏、高校卒業後した時に、父親とプロダクション会社に就職することを話し合い、フォーチューン500のとある会社の Phil McCoy氏と会いました。そして映画業界でのキャリアについて話をし、映画の制作は映画学校に行くのと同じ―だったらなぜ映画を作らないのか? という結論に達しました。その時 Phil氏は、「もし納得できる脚本を書いてくれたら、プロデュースするよ」と言ってくれました。
その後数カ月何度か会い、Phil氏の助言を得て、やっとどうにか脚本が出来上がりました。
数カ月の無謀なプリプロダクションを経た後も、撮影開始1週間前まで満足な人員が得られませんでした。私たちは仕事を持つ人も出演できるよう、2007年の8月中、毎週土曜日から水曜日まで撮影を行いました。
Jawbone.tv: それは非常に厳しいスケジュールのようですね。
Ian Hubert氏: 人生で最もキツイひと月でした。私は脚本家と監督であり、さらに経験者のクルーやプロの俳優とこのスケールの仕事をしたことがありませんでした。最初は毎日20人から30人の人々がいました。もしこの映画が成功するなら、それは単に250人以上の素晴らしい人々の努力と、この同じ夢に向かうすべての仕事の賜物です。
Jawbone.tv: 映画の資金はどうやって調達を?
Ian Hubert氏: 最も現実的な定義で言えば、Project London は Phil氏の兄弟である Nathan氏がプロデューサーとして加わった McCoy 兄弟によりプロデュースされた、予算のない制作物といったところです。投資者はいません。私たちは少額をクルーの人件費、ロケ代、コスチューム代、小道具などに出費しています。
Jawbone.tv: ポストプロダクション用の資金は残されていないんですね。一体どれぐらい複雑な作業なのでしょう?
Ian Hubert氏: 最終的な映画は約650のエフェクトショットを売りとする予定です。私が撮影時点で必要と仮定していた数十とは全く違います。VFXはロゴの削除・差し替えから大スケールのフルCGのモンスターとロボットとのバトルにいたるまであらゆるところにあります。
Jawbone.tv: ハリウッドのソフトウェアを使用していなかったことに全く驚きました。なぜ Blender を主要3Dアニメーションソフトとして選んだのですか?
Ian Hubert氏: 数年前にゲームを制作している友人から Blender を紹介されており、今回がこの最も慣れているソフトを使う機会だと思いました。Blender がフリーだという事実は、単にこの業界に参入する人だけでなく、多くのCGを学ぶことに興味がある人々を引付けていると思います。
実験的なことが好きな、才能ある人たちのいる大きなコミュニティがあり、このコミュニティには本当に助けられました。私たちは単にスキルを向上したい人や、楽んで作業する人たちから頻繁に助けてもらいました。
Jawbone.tv: どれぐらいの人々と一緒に作業されましたか?
Ian Hubert氏: 数年間での VFX クルーの数は12人から2人の間でした。私たちは現在全員ボランティアであるため、参加はその時点での自由度に依存しています。
Jawbone.tv: これはあなたが給料を払わず、みんなが自分の自由時間を捧げるに十分なモチベーションを持続させる必要があったということでしょうか? それは難しいことだったのでしょうか?
Ian Hubert氏: 大変でした! 実際には最初からいるメンバーは二人だけで、このプロジェクトで約2ダースの人が現れては消えていきました。平均して4人のチームで回しています。
大半の部分で、全員が自分の職を持っており、さらに多くの人が扶養すべき家族を持っているため、スケジュール管理が大変でした。作業のほとんどは仕事単位で、自由度とスキルのセットによってどの仕事をどの人に割り当てるかを決めていました。これでほとんどが上手くいっています。
Jawbone.tv: 私たちの知識によると、これは Blender で行われた最も大きなビジュアルエフェクトプロジェクトなのですが、どうやって維持されているのでしょう?
Ian Hubert氏: Blender は素晴らしい仕事をしてくれます。映画全体がハイデフで、最近のフレーム毎の平均レンダリング時間は約5分です(ハリウッドのスタジオはどこでもその作品の複雑さによる一日の許容範囲の判明に注目しています ― Ed.)。
最近になってやっとレンダリングオプションのパワーが分かり始めてきたところです。現在巨大な最終バトルの作業を行っているところで、ここではハイポリのロボットが、さらにハイポリクリーチャーと対決し、純粋にポリゴン数的に一回で全体をレンダリングするコストが高く付きます。
しかし、レンダリング設定を調整することで、各パスで必要なオブジェクトのみレンダリングすることが可能になります(各レンダーパスがその3Dシーンの一部を表示し、その後実写映像と合成するということです―Ed.)。
このレンダリングオプションがなければ、恐らくモデルの大幅なサイズダウン(ポリゴン数の削減)が行わなくてはいけなかったでしょう。
Jawbone.tv: このような大きなプロジェクトでは、すべてがそのまま上手く行くわけではなく、ソフトウェアのカスタマイズを行うために、ハリウッドのスタジオはプログラマを雇います。Blender の開発者たちを説得して同じことを行うのはどれぐらい難しいですか?
Ian Hubert氏: コードを変更する場合、Blender のオープンソースの原理は多くの柔軟性を与えてくれます。私たちはあまり必要でないことはしていませんが、行った時は重要なものなのです。(Blender certification review board メンバーである)Dolf Veenvliet氏に、Blender にテクスチャがついていないオブジェクトをすべて選択する機能があるかどうかを訊いた時、20分待った後、氏があるファイルを送ってきて「これでいけるよ」と言われたことを思い出します。
このコミュニティの一面は Blender での制作の労力を大幅に軽減するものの一つであり、本当に感謝しています。この映画がリリースされた時には、多くのモデルとリグをコミュニティに寄贈するつもりです。
Jawbone.tv: 観るのを楽しみしています。この映画の最終的なタイトルのアイデアはありますか?
Ian Hubert氏: (笑) 多分 Project London になると思います。恐らく結び文句はこんな感じになるでしょう:「Project Londonは、ロンドンとは無関係です」
Project London は2010年中期に、様々なメディアでリリース予定です。詳細は ProjectLondon.net にてどうぞ。Ian氏とPhil氏のブログもあります。
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